東京・品川区にある「品川寺」。
「しながわでら」ではなく「ほんせんじ」と読みます。
品川の閑静な住宅街にある歴史ある真言宗寺院。
品川寺を訪れた理由は、スイスのジュネーブ近郊に住むわたしたちにとって不思議な縁がある寺院だから。
今回の投稿ではその理由を含め品川寺の見どころをお伝えします。
品川寺(ほんせんじ)の概要
京急線・青物横丁駅から歩いてすぐにある品川寺。
宗派は真言宗醍醐寺派の別格本山です。
別格本山とは「本山に準じた待遇を受ける、特別な格式をもつ寺院」という意味。
806から810年の間に弘法大師(空海)によって創建された歴史ある品川寺。
室町時代に伽藍が建立された頃は大円寺という名前でしたが、江戸時代初期に現在の品川寺(ほんせんじ)と改称しました。
山門の手前にある大仏像。1708年に建立された地蔵菩薩坐像です。
品川寺の大仏は江戸六地蔵の第1番でもあります。(江戸六地蔵は18世紀初頭に作られた銅製の地蔵菩薩坐像のこと。Wikiより)
品川寺の境内
品川寺の境内はそれほど広くはなく、山門からさーっと全体が見渡せます。
少し雑然とした境内。
品川寺の本堂。
堂内には本尊である水月観音・聖観音をはじめ、弘法大師坐像、薬師如来像など多くの仏像がおさめられています。
稲荷堂。少し中国風なお堂です。
境内には開基である弘法大師像もあります。
数奇な運命をたどった品川寺の梵鐘
稲荷堂のすぐ横にある品川寺の梵鐘。
この梵鐘はパリ万博に出品する名目でヨーロッパに渡った1867年以降一度行方不明となりました。
その後なぜかスイスのジュネーブにあるアリアナ美術館に所蔵されていたとのこと。
品川寺の尼僧の方に、私たちがジュネーブ近郊から来て、梵鐘にまつわる話を知っている旨を伝えたら、特別に間近で見せていただくことができました。
角度を変えてみると何体かの菩薩像のレリーフを見ることができます。
尼僧の方や僧侶の奥様と直接お話し、あれこれ伺うことができました。
そしていただいた「品川寺大梵鐘物語」という冊子からもこの梵鐘にまつわる詳細が学べました。
簡潔にまとめるとこんな感じです。
1657年 梵鐘が鋳造される
1867年 パリ万博に出品される名目でヨーロッパへ渡る
1873年 ジュネーブ出身のルヴィリオ氏がスイス・アーラウの鋳造所で梵鐘を見つけて買い取る
1884年 ルヴィリオ氏が母の名前であるアリアナと名付けた館を建て梵鐘をその庭に置く。館はジュネーブ市に寄贈されアリアナ美術館として保存される。
1919年 当時ヨーロッパに留学していた学生がアリアナ美術館で梵鐘を発見する
1929年 ジュネーブ市議会で梵鐘が品川寺に返還されることが決定される
1930年 60年ぶりに梵鐘が品川寺に戻る
1991年 感謝のしるしとして新梵鐘(レプリカ)が送られアリアナ美術館の庭園に設置される
どうして梵鐘が万博後行方不明になったかは分からないようです。
1991年に梵鐘をきっかけとして品川区とジュネーブ市は友好都市となり、現在でも交流が続いています。
品川寺の奥様も何度かジュネーブに行ったことがあり、ジュネーブから学生を受け入れた経験もあると話してくれました。
何はともあれ、数奇な運命をたどった梵鐘のほんものをようやく品川寺で目にすることができて感慨深かったです。
品川寺周辺の通り名
品川寺のすぐ前の道は旧東海道。
旧東海道を北に向かって突き当たった道に特別な通り名がついています。
通り名は「ジュネーブ平和通り」。
(英語バージョンの「heiwa」はどうかな?と思うけど ww)
この通り名、後述するジュネーブにあるアリアナ美術館の住所が「平和通り」となっているから付けられたんじゃないかと想像します。
品川寺
拝観:境内自由
http://honsenji.net/
品川寺境内のカフェ
*2021-06-30更新*
品川寺境内に「品川茶屋」というカフェができています。
訪れた際にはなかったので最近できたのでしょうか?
境内でのんびりお茶するのは落ち着いて本当の一服になりそうですね。
スイスのジュネーブにあるレプリカの梵鐘
左の写真に写っている梵鐘がジュネーブにあるレプリカの梵鐘です。
品川寺のほんものを見た後に写真を見てみると同じデザインだということがわかります。(写真は2014年撮影)
右の写真はすぐそばにある石灯籠。
バックに写っているのがアリアナ美術館です。
ジュネーブのアリアナ美術館には桜の並木道が!
アリアナ美術館と日本の関係ばなしがもうひとつあります。
2014年は日本とスイスの国交樹立150年の記念の年でした。
ジュネーブにあるジャパンクラブがジュネーブ市と協力してプロジェクトを立ち上げました。
それはアリアナ美術館の庭園に桜並木を作るという内容。
実はこのプロジェクトには夫(写真家)が関わりました。
ランドスケープアーキテクトとしてジュネーブ市に務めていることから桜プロジェクトにたずさわり、植樹式にも参加しました。
上の写真は植樹式当日(2014年3月末)に撮影したもの。
この時はソメイヨシノと太白という2種類の桜の木、合計20本が植樹されました。
その後、さらに10本の桜の木が加わり、現在は30本の桜並木となっています。
植樹式に関する詳細や梵鐘の話が「スイス・インフォ」のサイトに書かれています。
興味ありましたらご一読ください。
アリアナ美術館
まとめ:品川寺の梵鐘とスイス・ジュネーブの関係
東京、品川区にある品川寺(ほんせんじ)。
真言宗寺院である品川寺にある梵鐘は一旦どこにあるのかわからなくなったものの、ドラマのような数奇な運命を辿って戻ってきました。
梵鐘が見つかったスイスのジュネーブと品川区は梵鐘の縁から友好姉妹都市となり、現在も交流が続いているというのもおもしろい縁です。
そのおかげで参拝することができた品川寺。
ぜひ一度、品川茶屋のコーヒー片手に品川寺にある江戸六地蔵のひとつである大仏と梵鐘を拝観しに行ってみてください。