【東京】数奇な運命をたどった品川寺の梵鐘とジュネーブの関係
- 2016.06.16
- 関東
- geneva, shingon-temple

真言宗寺院めぐりがライフワークのようになっている夫(写真家)と私。
今回紹介する寺院は真言宗寺院だからというのが拝観した理由のひとつ。そしてジュネーブ近郊に住む私たちにとって不思議な縁がある寺院でもあるんです。そんな品川寺にまつわるお話。
真言宗醍醐寺派の寺院「品川寺(ほんせんじ)」
京急線・青物横丁駅から歩いてすぐにある品川寺は真言宗醍醐寺派の寺院です。
こちらが品川寺の入口である山門。「しながわでら」と読みたくなりますが、「ほんせんじ」という名のお寺です。
806から810年の間に弘法大師(空海)によって創建された歴史ある寺院。室町時代に伽藍が建立された頃は大円寺という名前でしたが、江戸時代初期に現在の品川寺(ほんせんじ)と改称しました。
入口である山門の手前には大仏様が鎮座しておられます。こちら正しくは地蔵菩薩坐像。
品川寺の境内の様子
境内は広くなく、山門からさーっと全体が見渡せます。
少し雑然とした境内。桜はほとんど葉桜状態でした。
品川寺の本堂。堂内には本尊である水月観音・聖観音をはじめ、弘法大師坐像、薬師如来像など多くの仏像がおさめられています。
稲荷堂。少し中国風なお堂です。
境内には開基である弘法大師像もあります。
数奇な運命をたどった品川寺の梵鐘
稲荷堂のすぐ横にある梵鐘が今回の主役。この梵鐘はパリ万博に出品する名目でヨーロッパに渡った1867年以降一度行方不明となり、それがなんとジュネーブにあるアリアナ美術館に所蔵されていたというから驚きです。
尼僧の方にジュネーブ近郊から来て、梵鐘にまつわる話を知っている旨を伝えたところ、特別に間近で見せていただいた大梵鐘。
角度を変えてみると何体かの菩薩像のレリーフを見ることができます。
尼僧の方や僧侶の奥様と直接お話し、あれこれ伺うことができました。が、いただいた「品川寺大梵鐘物語」という冊子からこの梵鐘にまつわる詳細が学べました。簡潔にまとめるとこんな感じです。
1867年 パリ万博に出品される名目でヨーロッパへ渡る
1873年 ジュネーブ出身のルヴィリオ氏がスイス・アーラウの鋳造所で梵鐘を見つけて買い取る
1884年 ルヴィリオ氏が母の名前であるアリアナと名付けた館を建て梵鐘をその庭に置く。館はジュネーブ市に寄贈されアリアナ美術館として保存される。
1919年 当時ヨーロッパに留学していた学生がアリアナ美術館で梵鐘を発見する
1929年 ジュネーブ市議会で梵鐘が品川寺に返還されることが決定される
1930年 60年ぶりに梵鐘が品川寺に戻る
1991年 感謝のしるしとして新梵鐘(レプリカ)が送られアリアナ美術館の庭園に設置される
どうして梵鐘が万博後行方不明になったかは分からないようです。1991年に梵鐘をきっかけとして品川区とジュネーブ市は友好都市となり、現在でも交流が続いているとのこと。品川寺の奥様も何度かジュネーブに行ったことがあり、ジュネーブから学生を受け入れた経験もあると話してくれました。
何はともあれ、数奇な運命をたどった梵鐘のほんものをようやく品川寺で目にすることができて感慨深かったです。
ジュネーブにあるレプリカの梵鐘
さてジュネーブにある梵鐘はこちらです。
左の写真がそのレプリカの梵鐘です。品川寺のほんものを見た後に写真を見てみると同じデザインだということがわかります。(写真は2014年撮影)
右の写真はすぐそばにある石灯籠。バックにアリアナ美術館がチラッと見えるでしょうか?
品川寺周辺の通り名
品川寺のすぐ前の道は旧東海道。そこを北に向かって突き当たった道に特別な通り名がついているんです。
「ジュネーブ平和通り」と名付けられているんですね。英語バージョンの「heiwa」はどうかな?と思うけど。
品川寺
品川区南品川3-5-17
Tel: 03-3474-3495
拝観:境内自由
アクセス:京浜急行(京急)線「青物横丁」駅下車徒歩約5分
ウェブサイト:http://honsenji.net/index.htm
ジュネーブのアリアナ美術館には桜の並木道が!
アリアナ美術館と日本の関係ばなしがもうひとつあります。
2014年は日本とスイスの国交樹立150年の記念の年でした。ジュネーブにあるジャパンクラブがジュネーブ市に、アリアナ美術館の庭園に桜並木を作りたいと提案して実現したプロジェクト。
実はこのプロジェクトには夫(写真家)が関わりました。ランドスケープアーキテクトとしてジュネーブ市に務めていることから桜プロジェクトにたずさわり、植樹式に参加しまして。
なので写真はその植樹式当時(2014年3月末)に撮影したもの。この時はソメイヨシノと太白という2種類の桜の木、合計20本が植樹されました。その後、さらに10本の桜の木が加わり、現在は30本の桜並木となっています。植樹式以降、桜を見れてないので来年こそはここで花見したいな〜。
以上ジュネーブの桜情報でした。
ちなみにこちらの記事(こちら)に植樹式に関する詳細や梵鐘の話が書かれています。よろしければご一読ください。
アリアナ美術館
Avenue de la Paix 10, 1202 Genève, Switzerland
Tel: +41(0)22 418 54 50
開館時間:10:00 – 18:00(月曜休み)
ウェブサイト:http://institutions.ville-geneve.ch/fr/ariana/
今回の発見(Discovery)!
ジュネーブのアリアナ美術館にある梵鐘の話は以前から聞いていたのでぜひ本物を見てみたかったので実現できて嬉しいです。
またここが真言宗寺院であることも何かの縁かな、と。
品川寺近くの通りが「ジュネーブ平和通り」と名付けられているのは知らなかったな〜。よく見たらアリアナ美術館の住所が「平和通り」なんですね!これが今回の発見でした。
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